たけとけたと片付かない部屋

製造技術の仕事や家事・育児、趣味について書きます。

アニメ「プラネテス」を観ずに宇宙開発は語れない

夜寝てくれない娘を抱っこしながらAmazon Prime videoを観るのが日課になっています。本日紹介するのはこの作品、「プラネテス」です。

※このエントリには作品のネタバレが含まれます。

 あらすじ

 以下、Amazon prime video のあらすじを引用します。

2075年。サラリーマンである職業宇宙飛行士のハチマキ(星野八郎太)は宇宙ステーションでデブリ(宇宙ゴミ)回収を仕事にしている。自分の宇宙船を手に入れるため、彼は同僚たちとデブリを回収する日々。地球、宇宙ステーション、月の間を、旅客機が普通に行き交う世界で、ハチマキはどう想い、成長していくのか

 原作は幸村誠の漫画プラネテス』(ΠΛΑΝΗΤΕΣPLANETES)です。「プラネテス」は古代ギリシア語で「惑う人」を意味しており、転じて「惑星」の意味を持っています。英単語の「planet」の語源になっている言葉です。

 このタイトル通り作品の中では人生に戸惑い、悩んだりもがいたりしている人がたくさん登場しています。時に道を踏み外したり、途方にくれてしまったりする中でも人と人とが関わりあって、つなぎ合って一歩ずつ前に進んでいく作品です。

宇宙空間での設定が面白い

 作品は2075年を舞台にしており、人類が宇宙開発を進めてからまだ成熟しきっていない設定となっています。月の開発ではヘリウム3の資源開発、人類が宇宙進出するにつれてデブリ(宇宙ゴミ)が問題となり回収業者がいること、など設定を細やかに描いています。デブリ回収業者が助成金をもらいながら事業を行なっているけれど企業内では赤字でお荷物扱いされてる設定も、現代のゴミ回収業者の扱いと重なりリアリティがあります。

 宇宙空間での描写も素晴らしく、宇宙空間に出ると呼吸音しか聞こえない演出や、光のない真っ暗な宇宙が描かれたりしています。宇宙服の脱着シーンも丁寧に描かれていて「おぉー」って唸ってしまいました。

メロドラマで懐かしい人間関係の描写

 アニメ「プラネテス」では主人公のハチマキとならんで、ヒロインのタナベが第一話からがっつり絡んできます。「この2人いい感じになるんだろうな」という雰囲気が伝わってきます。お決まりの展開の予感が序盤からあるので、宇宙空間での生活という設定の難しさと組み合わさり見やすい展開になっています。ハチマキの親友や元カノ、タナベの友人も絡んでくるので序盤は「あるある〜」と安心して観れます。

 タナベの新人溢れる青さと、4,5年働いて社会を知った気になってるハチマキのやりとりも軽快でテンポよく進むのもよかったです。タナベの「やっぱり、愛が大事なんですよ」っていうベタな展開に引っ張られながら、一話完結でスカッとする構成で面白いです。

テーマとしては「貧富の差」「環境問題」「国家間競争」など

 ただ物語の核には暗い問題提起がなされています。宇宙開発を先進国が独占しており、地球では貧富の差が拡大していること、後進国は宇宙開発にも加わっていけないような現実、資源開発が進んでも戦争はなくなっていない状況。。。宇宙で長く生活することでがんになりやすいことなど、宇宙に人類が進出したことで直面している課題もクローズアップされていきます。時代情勢の描写が重厚で、単純なメロドラマでない面白さがあります。

 物事の側面を「光と影の対比」で描いているので、バランスが取れていてすっと沁みてくる展開でした。宇宙空間での太陽との距離とか、地球との位置とかでの演出もにくいですよね。

 登場人物も、宇宙での事故で最愛の人を亡くしていたり、故郷が内戦状態だったり、ベンチャー企業が吸収合併されていたり、とかなり重たい過去を背負っています。でもみんなどうにかこうにか折り合いをつけたりつけきれなかったりして宇宙をさまよっているのがまた魅力的なんですね。

「伏線で物事が直線的に解決しない」展開がとにかくすごい

 ここまで読んでくれた方で面白いと思った方は是非見てもらいたいのですが、最後の数話の展開はとにかくすごいです。物語全般で光と影の対比を行なっていますが、最後の数話では両者がぶつかって混沌としていきます。この展開で「伏線通りに物事が解決していかない」んですよね。宇宙船「フォンブラウン」にハチマキに会いにきたタナベがなんやかんやあってそのまま会えずに事件が終わる展開や、みんなが努力してタイムアップになった後に政治的解決を迎える展開なんか「え?それでいいの?」と思ってしまいます。

 ただ様々な思いの人がなすべきことをなそうとして、努力して動くんですがそれ自体はうまくいかない。けれど、そう動いたことで救われる展開になっています。それはハチマキが動いたから彼自身が幸せになれたわけではなく、ハチマキ自身はタナベやデブリ屋の仲間から幸せをもらうような、でもハチマキの行動でまた別の人が幸せになるような、関係性で連鎖する構造になっているんです。

 愛について語れなくなったタナベの前で、ハチマキが「おれの宇宙はちっぽけだったな」って気づくところは、綺麗事ではなくて、カッコつけているわけではなくて、人間の弱さとか狡さとかカッコ悪さを含めての言葉ですごくよかったです。(最後のプロポーズのシーンはずるいなあって感じでしたが)

まとめ

ということで、何もまとまっていませんがAmazon プライム会員の人は無料で見れるので、気になった人は是非見て見てください。僕は次は漫画版に手を出します。

www.amazon.co.jp

 なかなかいい解説ができないので、「作品見るのはちょっと、でも今の説明じゃあなんかよくわかんなかったな〜」って人は下記エントリも読んでみてください。

blog.monogatarukame.net

ではでは!